ZAQさんの「中二病」と田中公平先生の「ジョジョ」が素晴らしかったーー2012年秋〜2013年冬のアニソン①
2012年10月から2013年3月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
私:この2012年秋から2013年冬の2クール分のアニソンを振り返りたいと思います。
妻:まあ、この2クールで、アニソンが最も輝いていたアニメはダントツで『イクシオンサーガDT』だったね。
私:間違いないですね。まずは主題歌の「DT捨テル」と「レッツゴーED」は、この半年間の日本で最もブレークしたといっていい、ゴールデンボンバーを起用した点が、まずすごかったですね。
妻:ゴールデンボンバーの「元カノ殺ス」と「レッツゴーKY」という曲のアレンジなのよね。
私:それぞれ歌詞を完全に入れ替えて、アニメの作品世界と完全に融合した突き抜けた歌詞になっている点も素晴らしかったですね。
妻:あの歌詞は原曲の良さを超えていたからね。
またゴールデンボンバーとのコラボだけに留まらず、「バツイチ」や「◯◯タマ」という優れたキャラソン生んだ点もすごかったね。
私:あの作品終盤にあったキャラソン回には衝撃を受けましたよね。それぞれのキャラソンのレベルが高すぎるんですよね。いくつか日本のキャラソンの歴史に残るべき作品が生まれたと思います。
妻:まあ、この作品については語るべき点が多すぎるので、後でじっくりと掘り下げることにしよう。
私:この作品について語るために放置していたこのブログを再び書くことにしたと言っても過言ではないですからね。
続きを読む中二病というロックの進化形を示した水樹奈々の「ETERNAL BLAZE」から「BRIGHT STREAM」までーー2012年夏のアニソン③
2012年7月から9月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事・その3。
「リリカルなのは」に見た魔法少女アニメの様式美
私:2012年夏には「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's」が公開されました。
→魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's 予告編
妻:わざわざ会社を休んで、子どもを保育園に預けて映画館に行っていたよね。
私:アニソンファンとして、一度は向き合うべき作品だと思ったんですよ。私はゼロ年代アニメの素養がなくて「リリカルなのは」って見たことがなかったんですが、なにせあの水樹奈々と上松範康のコンビが生み出した不朽の名曲「ETERNAL BLAZE」を生んだ「魔法少女リリカルなのはA's」のリメイクですからね。
妻:あの曲が名曲であるのは間違いないけれど、ついにあのロリータ魔法少女アニメの世界に足を踏み入れたわけね。それでどうだったのよ。
私:映画の後半は泣き通しでしたね。
妻:うわ。キモいね。
私:いや正直、自分自身あの作品にそんなに泣かされるとは思いませんでしたよ。いわゆる泣かせるための展開みたいなものが、怒涛のように押しよせるストーリーがすごすぎました。
続きを読む「うたプリ」という乙女ゲーが生んだキャラソン文化の頂点・突き上げるこの想いは愛じゃなきゃなんなのかーー2012年夏のアニソン②
2012年7月から9月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事・その2。
私:昨年7月に「うたの☆プリンスさまっ♪」の新曲「RAINBOW☆DREAM」がリリースされました。
妻:一昨年に放送されたアニメの終了後、一年くらいたって、今年3月に発売予定の新作ゲームの主題歌というだけであれだけの反響があるというのが、うたプリ人気の衰えのなさを感じたね。
私:そうですね。ただ、この歌の話に入る前に、冒頭に触れたように、昨年5月に発売され我々を魅了した、うたプリのライブDVD「ライブ うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVELIVE1000%」の話からはじめることにしましょうか。
妻:あれはすごいDVDだったね。まさかライブDVDをあんなに繰り返して見ることになるとは思わなかった。
私:ライブとして聴くと、今までとは別の魅力に気づかされるんですよね。以前、うたプリについては「オルフェ」と「マジLOVE1000%」の素晴らしさについて語ったわけですが、それだけで片付けてはいけないと思いましたよ。
妻:まあ、あの2曲がアニソンの歴史に刻まれる名曲にであることは間違いないけどね。
私:だから今回は敢えてあの2曲には触れず、それに止まらないうたプリの魅力というものを3つのポイントをあげて話していきたいと思います。
妻:なるほど。なんだか形式的に構えてみたね。
続きを読む「じょしらく」における神前暁と前山田健一の夢の競演ーー2012年夏のアニソン①
2012年7月から9月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は3つに分割しており、この記事は<1/3>になります。
私:まずは2012年夏のアニメソング全体を振り返りたいと思います。
妻:まあ、今期のアニメをアニソンで評価するなら「じょしらく」がダントツだったね。オープニングの「お後がよろしくって…よ」と、エンディングの「ニッポン笑顔百景」ともにすごいレベルの高さだった。
私:それは間違いないですね。
現代日本を代表するアニソン作曲家、前山田健一さんと神前暁さん夢の共演。落語を題材にした三味線が響くアニソンが素晴らしかったですよね。
妻:今期のアニソン的にいうとこのアニメがすごすぎて、他がちょっと霞む感じだったよ。
私:そうですね。7月の初めにこのアニメを見ただけで、今期はこれで十分なんじゃないかって思いましたね。この夏アニメの奇跡だと思っていますよ。
妻:また大げさな。
続きを読むGRANRODEOの黒子ソングから菊池成功のルパンまでーー2012年春のアニソン(後編)
2012年4月から6月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は前後編2つに分割しており、この記事は後編になります。
改めて感じたアニソンアーティストの層の厚さ
私:さて、今期のアニソンアーティストの活躍を振り返りたいのですが、アニメ「黒子のバスケ」のアニソンのレベルの高さには驚きました。
妻:ジャンプアニメのアニソンにやられるとは思わなかったね。
私:まずはオープニング・テーマのGRANRODEOの「Can Do」ですね。ジャンプの王道なスポーツものに相応しい正統派の男前ロックな楽曲を高らかに歌い上げる谷山紀章はすばらしいですね。往年のB'zかと思いましたよ。
妻:今更GRANRODEOの良さに気づくとは。まあ、きーやんの歌は声優の別格にすごいからね。
私:アニソンにおけるロックな男性ボーカルもJAM Project的な熱いアニソンロックから、GRANRODEOの正統派ロックまで幅広いですよね。
「黒子のバスケ」はアニメとして見てもけっこう面白かったですね。我々の世代だとジャンプのバスケマンガというとスラムダンクであり、男前キャラが多くの女性を魅了していたイメージなんですが、この作品も女性ファンに受けそうですよね。
妻:ジャンプの女性ファンに対するマーケティングは完璧よね。アニメ化にあたって、この豪華声優陣とGRANRODEOを持ってくるあたりが女性ファンをわかっているなという感じだね。
私:そして、エンディング・テーマはヒャダインこと前山田健一さんの「Star it right away」でしたね。
これは、前山田さんの考えるバスケアニメのテーマ曲って感じでした。
妻:そうね。スポーツをテーマに、やっぱりヘタれた男の恋心を歌った感じでね。そして、「カカカタカタオモイ」に続いて早口なサビが今回も展開されていたね。
私:またカラオケで歌うのが大変ですよ。
前山田さんはももクロのヒットにあわせて、世の中の注目度があがっていますよね。この前は、情熱大陸で取り上げられていましたからね。
妻:Eテレの天才テレビくんにも出ていたよ。なんか活躍の場を広げている。
ももクロ人気もすごいよね。本当に今年の年末の紅白に出そうな勢いになってきたね。
私:そうですね。まあ、ももクロの素晴らしさについて後で改めて触れるとして、GRANRODEOとヒャダインさんという組み合わせには驚かされたアニメでした。
その他、今期のアニソンアーティストの曲はいがかでしたか?
妻:「緋色の欠片」の主題歌で藤田麻衣子さんの「ねえ」は良かったね。
私:私は藤田麻衣子さんって全然知らなかったんですが、今期のアニメチェックをしてまわっているときに、いきなり名曲過ぎる楽曲と本気のボーカルにびっくりしましたよ。
妻:乙女ゲーの世界では泣ける曲を作る人として有名だからね。
私「恋に落ちて」とか「瞬間」とか、過去の作品を聴いても、どれもレベルが高いんですよ。こんな人が主に乙女ゲーの世界で知られているところにも、なんだか奥深さを感じましたよ。私の知らない世界はまだまだ広いんだということがわかりました。
また、アニメではないんですが深夜にやっていた特撮もので、桃井はるこさんが歌う「非公認戦隊アキバレンジャー」も気になる楽曲でした。
妻:UNDER17で萌えソングの一時代を築いた人らしいよね。
私:「いつかは日曜の朝日浴びるのさ」と深夜に歌いあげる桃井はる子には、秋葉原を舞台に妄想の世界で戦う戦隊ものにふさわしい、アキバ文化への愛を感じました。
それから比較的新しいアニソンアーティストの中では、「氷菓」の主題歌でChouchoの「優しさの理由」にハマリましたよ。こういうピアノが印象的なロックって私は大好きなんですよ。
妻:Chouchoさんもニコニコ動画で活躍していた人なのよね。この曲は誰が作曲しているんだっけ?
私:宮崎誠という人らしいです。調べてみるとけっこういろいろな仕事をしている方なんですが、鈴村健一の「あすなろ」とかはわかるんじゃないですかね?
妻:ああ、なるほどね。あれもロックなピアノが印象的な曲だもんねえ。
私:Kalafina、GRANRODEOから桃井はる子、Chouchoと見てくると、改めてアニソンアーティストの多彩さと層の厚さを感じるシーズンだったと思います。
「坂道のアポロン」が生んだジャズとアニメの奇跡の文化祭セッション
私:「坂道のアポロン」では、「カウボーイビバップ」以来、菅野よう子さんが渡辺信一郎監督とタッグを組んでジャズを題材にした作品に取り組みました。
妻:まずはオープニングの「坂道のメロディ」よね。JUDY AND MARYのYUKIさんが歌う菅野よう子ソングはなかなか素敵だったね。
私:あの何だか舌足らずな独特の歌い方と、サビのロックな盛り上がりが、YUKIさんを絶妙に活かしているなあと思いましたよ。
妻:そうね。菅野よう子がジュディマリのYUKIをイメージして作ったキャラソンというべきかもね。
私:今期はYUKIさんもそうなんですが、アニソンにおいてJPOP全盛期の名前をちょこちょこ見かけました。
「宇宙兄弟」の主題歌「Feel So Moon」はユニコーンの新曲で、「つり球」のエンディングテーマはスピッツの「空も飛べるはず」のアレンジでしたしね。
妻:「アクセル・ワールド」でMay'nさんが歌う主題歌「Chase the world」の作曲が浅倉大介だったりとかね。
私:いつか現代のアニメにみられるJPOP全盛期のアーティスト系譜みたいものをテーマとして掘り下げて考察してみたいところです。
話を「坂道のアポロン」に戻すと、これの菅野よう子の楽曲もよかったんですが、劇中で演奏されるジャズがすごかったですね。
妻:ピアノの人とか普通に有名な人なんだよね。
私:松永貴志ですよね。私はアニソンに目覚める前にジャズ・ピアノにかぶれていたことがあったので、一時期聴きまくっていましたよ。17歳でメジャーデューした早熟な天才ピアニストとして有名な人ですね。ドラムの石若駿さんもスーパー高校生ドラマーとして有名だったらしいので、学園ものバンドの設定にも、なんだかリアリティを与えられる二人ですよね。
妻:そして第7話の文化祭シーンはすごかったね。3分半くらいの演奏シーンがアニメでそのまま流されるっていうのが、ニュースにもなっていたしね。
私:アニメ史に残るべき神シーンでしたね。あの場面にはなんだかいろんなものが凝縮していましたよね。
もともと原作が少女マンガなので、主人公達の心理描写がライトなBLとして読めるような感じじゃないですか。
妻:そうよね。文化祭前に、別のバンドで演奏することになった仙太郎に対して、薫が「僕には君は必要ない」とか言って仲違いするのよね。
私:そうそう。反語的に「僕には君が必要なんだ」って完全に告白しちゃっている名セリフでしたね。
妻:そんな二人のすれ違いが、文化祭のセッションの中でぶつかり合い、なんだか感動的に分かり合うんのよね。
私:演奏が終わったあと、二人で手をつないで走り去って行きましたからね。
原作の青春な心理劇と、ジャズアーティストの演奏、それを音楽監督として演出した菅野よう子と、音楽にこだわりぬいた渡辺信一郎監督。偉大な才能が集まって生まれた神シーンだったと思います。
妻:涼宮ハルヒの神回「ライブアライブ」と並んで、アニメ史に残るべき文化祭ライブシーンだろうね。
私:そうですね。
キャラソン文化のわからない菊地成孔「新・嵐が丘」
妻:話は変わるけど、ジャズといえば、「LUPIN the Third -峰不二子という女-」のオープニングについても騒いでいたよね。
私:ああ、ジャズというかサブカル音楽の巨匠、菊池成孔の手がけた「新・嵐が丘」ですよね。
妻:すごいサブカル臭だったよね。
私:サブカルを汚いもののように言わないでください。
まさか朗読で来るとは思わなかったですね。
妻:どうせ不協和音と詩の朗読、そして「嵐が丘のヒースクリフ」とか言われると、なんだか高尚な感じがしてくるんでしょ。
私:なんでそんなに喧嘩腰なんですか。まあ、それがいいんですけどね…。そして、曲の最後であのタイトルクレジットに重なるところも素敵なんですよ。あそこだけ妙にポップで、にわかにルパンっぽくなって終わるところが絶妙なセンスの良さだと思いましたよ。
妻:峰不二子がとりあえず全裸で乳首をさらけ出している劇画ちっくなアニメーションもすごかったよね。
私:乳首の隠さなさ加減がすごかったですよね。最近の美少女おっぱい格闘アニメが様々な光の描写で胸を隠しているのは一体なんだったんだろうという感じでしたよね。
まあキャラソンファンとして、唯一不満を言わせてもらうなら、なんで沢城みゆきに朗読させなかったのかというところですね。
妻:実力派といわれる沢城みゆきなら、けっこう良い感じに読みこなしそうよね。
私:そうなんですよね。菊地成孔作曲で沢城みゆきが朗読する峰不二子のキャラソンとしての「新・嵐が丘」を見たかったです。「菊地成孔はさすがキャラソンでも一味違うな」とか言いたかったのですが。
妻:菊地成孔は現代日本のキャラソン文化に対する理解が圧倒的に不足しているということね。
私:なんでそんなに上から目線なんですか。別にわかろうとするような方ではないような気がしますが。
まあ、ブルーレイ特典なんかで沢城みゆきバージョンを収録してくれたりしたら素敵ですよね。
そして、監督の山本沙世さんにも今後がんばってほしいと思いますよ。
妻:「ミチコとハッチン」の監督だった人なのよね。
私:私は、あの作品にはしびれっぱなしでしたからね。時代に迎合しない作品を作れる人ですね。
そういう意味では、今回の山本沙世監督と菊地成孔というのは、この萌えが全盛のアニメでいうところのサブカルチャーとは、かなり対極にあるサブカルチャーを示して見せたところが興味深かったと思います。
アイドルソングをアニメに持ち込むAKBとキャラソンをアイドルシーンに逆輸入するももクロ
私:そしてアニソンファンとして私が今期の注目作していたのは、人気絶頂にあるAKB48を題材にしたアニメ「AKB0048」でした。
妻:まさか秋元康が作中で神格化されているとは思わなかったね。
私:そこですか。確かに神社のようなところに祀られて、お告げを発していましたよね。
妻:まあ、この春のAKB総選挙にあわせて、こんな時代にダブルミリオンを達成したくらいだからね。そろそろ音楽業界では神格化されてもいいのかもしれないね。
続きを読む「太陽曰く燃えよカオス」と「to the beginning」ーー2012年春のアニソン(前編)
2012年4月から6月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は2つに分割しており、この記事は前編になります。
私:そろそろ春アニメが終わりますね。まずはこの2012年春の3ヶ月を振り返っていかがでしたか?
妻:キャラソンにまた新たな金字塔が打ち立てられたね。
私:「這いよれ!ニャル子さん」のオープニング「太陽曰く燃えよカオス」ですよね。今期のキャラソンといえば何といってもあの曲でしたね。
妻:そうね。この曲はすごかったけれど、それを除けばキャラソンは不作だったかな。むしろ、今期はキャラソンではなくて、アニメの主題歌を主な活動の場にしているアニソンアーティストの底力を感じた3ヶ月だったと思う。
私:そういう意味では、まずはKalafinaが歌った「Fate/Zero」の主題歌「to the beginning」ですよね。
妻:そうだね。今期を代表するのはこの「太陽曰く燃えよカオス」と「to the beginning」だろうね。
私:間違いないですね。
妻:それから、アニソンアーティストの曲としては、ジャンプアニメ「黒子のバスケ」のオープニングでGRANRODEOが歌う「Can Do」が秀逸だった。エンディングでヒャダインが歌う「Start it right away」も良かったよね。
私:私は乙女ゲー原作の「緋色の欠片」のオープニングで藤田麻衣子の「ねえ」とか、桃井はる子による「非公認戦隊アキバレンジャー」のテーマ曲に唸りましたよ。
妻:やはりアニメやゲームで活躍してきたアーティストの活躍が目立ったという印象だね。
私:そして、前回の3ヶ月前に我々が注目していたのは、菅野よう子さんが再びジャズを題材にした作品に取り組んだ「坂道のアポロン」でした。
妻:オープニングの「坂道のメロディ」良かったね。管野よう子の曲をJUDY AND MARYのYUKIさんが歌うとは。
私:あの作品は、菅野よう子のオープニングとエンディングも勿論良かったんですが、ジャズミュージシャンによる演奏シーンが神がかってましたね。
妻:ジャズといえば「Lupin the Third 峰不二子という女」のあのオープニング・テーマも何だかすごかったね。
私:まさかの菊地成孔が作曲した「新・嵐が丘」ですね。何かを語らずにいられない作品でしたね。この二作品において、日本のアニメがジャズとの間で不思議な邂逅を遂げた3ヶ月でもありました。
妻:そういえば、3ヶ月前に楽しみだって言ってた「AKB0048」はどうだったのよ。
私:うーん。なんとも一言では言い表せない作品ですが、色々と考えさせられるものはありましたね……。
まあ前置きはこのぐらいにして、早速一つずつ振り返ってみることにしましょうか。
奇跡のメディアミックス「太陽曰く燃えよカオス」・クトゥルフ神話から生まれたキャラソンがTwitterで拡散する日本
私:まずは「這いよれ!ニャル子さん」の主題歌で「後ろから這いより隊G」が歌うキャラソン「太陽曰く燃えよカオス」ですね。中毒性の高い「うー」「にゃー」は人々の心を掴み、AA化されてTwitterや2ちゃんねるで流行したことがニュースにもなりました。
妻:(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! よね。このAAも秀逸で、あの異常に耳に残る冒頭部分に絶妙にマッチしているのよね。
私:ちゃんとニャルラトホテプを元ネタとして踏まえ、あの意味不明ながらもテンションの高い唸り声はすごいですよね。
妻:「這いよる混沌」を電波に表現してみせたキャラソンの名作というべきよね。
この曲の中毒性は本当にすごくて、家で流れるたびに、うちのもうすぐ2歳になる我々の娘も「うー、にゃー」って言っているからね。
私:パパとしては、あれを聞くたびに萌え死にそうですよ。
妻:作曲した田中秀和さんは、神前暁さんも所属している事務所のMONACA人なのね。
私:またキャラソン界で新たな才能が花開いた感じですよね。最近のMONACAいいですよね。
妻:劇中歌で使われていた「黒鋼のストライバー」も劇中作品のネタにしておくのは惜しいぐらいの曲だしね。昨年の「WORKING!!」の二期のOP/EDも良かった。
私:神前さんだけじゃなくて、MONACAという事務所としてもこれから注目していきたいところですね。
妻:話をニャル子さんに戻すと、そもそもニャルラトホテプが萌えキャラになるのってどうなのよ?
私:私も詳しくないんですが、クトゥルフ神話で「数多の化身をもってあらゆる時間、空間に顕現する」とされている邪神らしいですからね。
妻:そうだとすると、現代日本でアホ毛をつけた萌えキャラとして顕現してもそんなに間違いではないのか…。
私:むしろそんな展開が全然ありなところがクトゥルフ神話の偉大さなのかもしれないですね。さすが戦前から二次創作されてきたクトゥルフ神話の懐の深さというべきでしょうか。
妻:今回、クトゥルフ神話のニャルラトホテプが日本のライトノベルで萌えキャラになり、アニメ化を期にキャラソンが生まれ、AAになってTwitterで拡散してニュースになったということよね。
私:壮大すぎるメディアミックスですよね。なんだかこれは文化的な事象としてすごいと思いますね。
妻:ラヴクラフトもきっとびっくりな展開よね。
私:畑亜貴さんの歌詞も素敵でした。この春、金環日食や金星の太陽面追加に沸く日本にあって、歌詞の中で「太陽なんて眩しくって、闇のほうが素敵」と言い切っていましたからね。
妻:まあ、ラブクラフトの見つめた人間の闇が長い時間をかけて電波ソングに昇華したこの奇跡のメディアミックスは、ある意味金環日食よりもすごい出来事だったのかもね。
私:先週の「めだかボックス」の最終回の中で、西尾維新が脚本を書いて、登場人物に「メディアミックスのためのメディアミックスが横行するアニメ業界みたいな」と語らせる場面があったんですが、そんな日本のアニメ業界において真のメディアミックスを体現してみせた作品として、アニソンの歴史に刻まれるべき一曲だと思いますね。
梶浦由記が虚淵作品に捧げた最高傑作「to the beginning」・音楽だけで死亡フラグに聞こえる名曲達
私:アニメ「Fate/Zero」が昨晩最終回を迎えましたね。昨年放送分とあわせて、この6ヶ月間、本当に楽しませて頂きました。
妻:アニメファンとして幸せな6ヶ月だったね。
設定と結末が本編に縛られている中で、前日譚を膨らませてあれだけの物語を作る虚淵さんがすごいですよね。
私:本編と矛盾のない範囲で、その設定を過剰に深読みして本編を凌駕した物語を作るという感じでしたよね。奈須きのこさんの元ネタに対する、虚淵さんのストーリーテラーとしてのプライドをかけた戦いのように感じましたよ。
妻:昨晩は、あんなにバッドエンドなのに何だか清々しい最後だったね。
私:ギルガメッシュなんて全裸で何だかすっきりした様子でしたからね。
ラストもそうだと思いますが、私がこの作品ですごいと思ったのは、他では後味が悪くなりそうなストーリーがやけに清々しいんですよ。
ランサー陣営が主人公の陰謀によって非業の最期を迎える回すら、何度も見返すような見事さがありました。
妻:この作品自体が、端的に言ってしまえば、主人公が多大な犠牲を払って達成しようとした妄想が裏切られて終わる救いのない物語だからね。
私:みんなが何かしら歪んだ信念を持っていて、それを各々が勝手にめいいっぱい貫き通した上で、それ相応の報いを受けてカタルシスを得るという、虚淵さん流のブラックな清々しさを生む構図が見事なんだと思いますね。
妻:虚淵さんの脚本の面以外でも、この作品がこの異常に高いクオリティでアニメとして描き切ったところがすごかったね。剣と魔法のファンタジーなのに、カーチェイスからドッグファイト、大軍勢による戦場シーンまで貪欲に盛り込まれすぎた要素を神がかった作画で対応しきっていたからね。
私:地上波のアニメでこの品質を実現できたことが既に奇跡ですよね。日本のアニメ文化って本当にすごいと思いましたね。このクオリティの作品が地上波のテレビで深夜に流れている日本アニメのレベルの高さは、国民として素直に誇らしいですよ。
妻:また、この学園ものと萌えキャラアニメが全盛の時代に、登場人物のこの年齢の高いおっさんばかりのアニメでここまで売れるのもすごいね。
私:あのライダーの完全なおっさんキャラが、反則的なかっこ良さでしたからね。
妻:まあ、私にとってこの話は、ライダーのマスターだったウェイバーが、ライダーに向かって「僕はあなたの臣下だ」と泣きながら叫ぶ結末に向けて、6ヶ月間をかけて壮大にデレる過程を描いた物語だったとみているよ。
私:その二人を語りだすと長くなりますけどね…。
まあFate/Zero自体を語り出すと収集がつかないので、そろそろ本題のアニソンに入ることにしましょうか。
妻:そうね。
私;前クールとは違って、2期目の主題歌はすべて梶浦由記さんが作曲を手がけてた3曲「to the beginning」「空は高く風は歌う」「満天」でしたね。
妻:どれも良かった。ただ、やっぱりこの作品を代表するのは「to the beginning」だね。
私:そうですね。ただ初めて聴いた時には、正直ここまで胸に響く曲になるとは思っていなかったんですよね。
妻:昨年放送された1クール目の名曲「oath sign」と比較して、そこには及ばないかという印象だったよね。それがじわじわといい曲に思えてきてね。Kalafinaの厳しく重厚なコーラスが作品世界とあっているのよね。
私;そうなんですよ。作品において死体が積み上がっていくのにあわせて、あのコーラスが持つ意味の重みが増してくるんですよね。
妻:確かに死にゆくキャラたちを高らかに葬送するかのような、そして裏で沢山の人が犠牲を払っても突き進む厳しさを表現したような楽曲だよね。
この楽曲に説得力を与えているKalafinaの分厚いコーラスはJamProjectと並んで日本アニソン界の宝だと思うよ。
私:1クール目で「oath sign」の作曲を手がけている渡辺翔さんと梶浦さんが主題歌を書き分けるのは、「まどか☆マギカ」に続いて二作目になるんですよね。
「まどか☆マギカ」においては、あの作品を代表する曲は渡辺翔さんの「コネクト」の方だったのではないかと思うんですよ。
妻:まあ、あの曲は作品における最大の仕掛けと絡めた神曲だったからね。
私:そして今回、Fate/Zeroの1クール目で、その渡辺翔さんが手がけた「oath sign」がかなりのヒットを収めたじゃないですか。
妻:うん。あれは神曲と言って間違いないと思うよ。
私:私はそこで梶浦由記さんのプライドに火がついたんではないかと勝手に邪推しているわけです。「to the beginning」は、劇伴を含めて手がけた梶浦さんが、この作品にあるべきテーマソングについて、全力をかけて出した答えだったように思いますね。
妻:Fate/Zeroにおけるテーマ曲という聖杯をめぐる戦いということかしらね。まあ、あえて甲乙をつける必要はないと思うけどね。
私:そうですね。1クール目が「oath sign」、2クール目が「to the beginning」。まさにこの歴史に残るべきアニメに相応しいアニソンだったと思いますね。
私はこれまで梶浦由記さんの曲って今ひとつピンときていなかったんですが、この作品で梶浦由記の良さに開眼して、ついに我が家のiTunesに梶浦由記プレイリストが出来ましたね。
妻:私は梶浦由記の曲って聴くとどれも同じ曲に聞こえると前から思っていたんだけど、改めてプレイリストにまとめて聞くと、その楽曲の統一感がすごいよね。
私:あのプレイリスト重いですよね。
ある日、PCで子どもの写真のスライドショーを見ているときに、梶浦由記のプレイリストを流してると、なんだかとても悲しい気分になりましたよね。
妻:そんなことがあったね。なんか梶浦由記の曲が流れているだけで、楽しかった思い出が永遠に損なわれてしまったような雰囲気が漂ったよね。
私:うちの子は別に今のところ何の問題もなく元気にしているんですけどね。
そこで気づいたんですが、梶浦由記さんの曲って、その音楽だけで既に死亡フラグなんだと思うんですよ。
妻:なるほど、音楽だけで死亡フラグと。そんな梶浦由記と虚淵玄は最強の死亡フラグコンビというべきなのかもしれないね。
私:そうですね。ファンとしては、この二人が手を組んだ作品をもっと見てみたいですね。是非これからも日本アニメの暗黒面を支えていっていただきたいと思います。
キャラソンに別次元の可能性を拓いた初音ミクーー2012年冬のアニソン③
2012年1月から3月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は3つに分割しており、この記事は<3/3>になります。
キャラソンに別次元の可能性を拓いた初音ミク
私:そしてこの冬には、ここに来て初音ミクブームが訪れました。あのGoogleのCMと「Tell Your World」の出来が良すぎましたからね。
妻:初音ミクに対してGoogle Chromeが何か貢献したわけじゃないのにね。
私:まあ、いいじゃないですか。あれのおかげで、初音ミクって何のアニメのキャラなのかとか聞かれるようになりましたね。そもそもアニソンを聞くからといって、初音ミクやボカロ曲にそこまで詳しいってというわけじゃないんですが。
妻;あの世界は深いので、あまり我々のような素人が語るべきではないんだろうけどね。
私:我々はボカロの世界を語るに足る知識を持っていないですよね。ただキャラソンファンとして、キャラソン視点で初音ミクを見るなら、あれが今期で一番ヒットしたキャラソンであることは間違いないですよね。初音ミクは21世紀に入って、最も楽曲に恵まれたアイドルであり、最も豊富にキャラソンが作られたキャラクターだというべきなんでしょうね。
妻:今更言うことではないかもしれないけれど、ボカロと初音ミクが出てくることで、今までアニメや漫画があってキャラソンがあったのが、まず初音ミクといったキャラがいてキャラソンが出来る時代になったということよね。
私:また、今まで限られた作曲家によって作られてきたキャラソンが、一気に膨大な数の素人を巻き込んで、アマチュアの楽曲作りの中心になったということでもありますね。
妻:その中から名曲が生まれ、プロとしてアニソンやキャラソンを作る作曲家が生まれるというのは必然の流れだったというべきか。
私:今期は初音ミクブームにまるであわせるかのように「ブラックロックシューター」がテレビアニメ化されたわけですが、あれに至っては、キャラとキャラソンがまずあって、それがアニメ化されるという逆転の時代になったとも言えますね。
妻:そうだよね。また「ブラックロックシューター」という曲については、初音ミクがブラックロックシューターというキャラのキャラソンを歌った曲だと言える意味でも興味深い。
私:キャラがキャラソンを歌う時代だっていうことですよね。今回のアニメ化にあたっては、せっかくだからあの曲を初音ミクじゃなくて歌手や声優さんに歌うというのも聞いてみたかったような気もしますけどね。
妻:さすがにあの曲はもう初音ミクのイメージで固まっているから難しかったんじゃないかな。
私:ボーカロイドがキャラソンとして歌った曲が、アニメ化を通じてキャラソンとして人間がカバーするみたいなすごい状況が見れるかとちょっと期待したんですけどね。
妻:そんな風に人間とボカロがある意味で逆転したような世界も来るんだろうね。ニコニコ動画の「歌ってみた」のプロ版だよね。
私:逆転というか、まあそういうふうに双方向に刺激を与えることで新たな文化的地平が開かれていくということなんですかね。まあ、そういう意味では、ボーカロイド3のGUMIも象徴的な存在ではありますよね。
妻:あのキャラの声優は中島愛よね。
私:そうですね。あれはマクロスFとランカちゃんのヒットなしで中島愛のボカロ化であるGUMIが生まれることはなかったと考えると、ランカちゃんあってこそのGUMIであって、あの作品・キャラがあってこそのボカロと言えるようなのものだとも思えるんですよね。
そんな風に、作品とキャラと人間とボカロの関係性がとても複雑に影響しあって、それが豊かで新しい音楽文化を創っていんだと思います。アニメ・ゲームの文化からの派生として生まれたキャラソンが、ついに音楽シーンの中心に立つ時代が来たというべきなのかもしれません。
妻:また大げさにもっともらしいことを言おうとしているだけのような感じがするけどね。そもそも今期のアニメ「ブラックロックシュータ」は面白くなかったし。
私:身も蓋もないことを言いましたね…。否定はできないですが…。
妻:私は第一話の「とにかく汚い色のマカロン」がトラウマになりそうで、見るのをやめたよ。
私:壮絶な鬱アニメでしたね。私は作画が美しいとか、岡田麿里がいつか面白くしてくれるとか、花澤香菜作品はおさえておくべきだとか、自分を様々に鼓舞しながら何とか最後まで見届けましたよ。まあ私の中でのあの作品は、ryoさんが生んだボカロの神曲についての長いプロモーションビデオだったと思うことにしています。
ただryoさん作曲のエンディング「僕らのあしあと」は良かったですね。
妻:ryoさんは今期も大活躍だったよね。傷物語の「ナイショの話」は今までのryoさんの曲とはまた違った感じだったしね。
私:楽曲の幅がひろがったよう思いますね。私の中での一番はギルティクラウンの二期エンディングテーマの「告白」でしたよ。かっこいいピアノ曲に惚れます。ryoさんの曲はどれも外さないですよね。
妻:ボカロ文化出身の天才だね。これからもボカロから偉大なアニソン・キャラソン作家が生まれることに期待してしまうね。
私:そうですね。私が最近ハマっている「ほぼ日P」さんとか、あのキャッチーな楽曲をすさまじい頻度で発表できる才能をぜひキャラソン界で活かして欲しいですね。今期の「サメの死体を投棄するだけの簡単なお仕事です」も素晴らしかったです。
妻:あの2ちゃんを題材にした尖った歌詞を作る感性が、商業ベースに載せられるのかわらないけどね。
私:そうですね…。しかし、キャラソンでこそあの尖った感性は活きるとも思うんですよ。あの人ならSM判定フォーラムを越える杉田智和の新たな名曲をかけそうな気がします。
長くなってしまいましたが、今期の初音ミクブームではボカロについて改めていろいろと考えさせられるものがありました。これらかもボカロが切り開いたキャラソンの可能性について見ていきたいと思います。
2012年春のアニメソングへの期待
私:最後に、この4月からの2012年春アニメへの期待について話したいと思います。
妻:とりあえず、菅野よう子さんの「坂道のアポロン」だね。なにせジャズを題材にした作品だからね。
私:ジャズと菅野よう子といえば「COWBOY BEBOP」ですもんね。あの「Tank!」を越える名作が生まれるかもしれないですね。
妻:それから、とりあえず今期我々の中で最大のヒットアニソンを生んだ「アクエリオンEVOL」と「モーレツ宇宙海賊」はまだ1クールを残しているからね。
私:菅野さんと前山田さんが2クール目にどんな曲をもってくるのか楽しみですよね。
妻:あと私としては「Fate/Zero」のセカンドシーズンだね。1クール目のアニソンは素晴らしかったし。
私:あれはアニメとしても楽しみですね。時代的に後を描いた前作を見ているから結末はわかっている作品なのに、これだけ楽しみなのってすごいですよね。
妻:あのイスカンダルがどれだけ壮絶に死ぬのかという一点だけでも妄想が膨らむよね。
私:そこだけできっと観る価値がありますよね。きっとすごくおいしい死に方をするんでしょうね。そのために小説読まないように耐えてますからね。
妻:あとは、「交響詩篇エウレカセブン」の続編「エウレカセブンAO 」も気になるね。
私:あれも前作は音楽が良かったですもんね。
私が非常に気になっているのは、AKB48を題材にしたSFアニメ「AKB0048」ですね。
妻:あれかあ。私にはアニオタとアイドルオタが壮絶な罵り合いを繰り広げる悲惨な未来しか見えないけどね。
私:非常にそんな予感はしますが、なんせマクロスFで絶対的なアイドル「超時空シンデレラ」を創り上げた河森監督と、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で往年のJPOPの名作アニメにしてみせた岡田麿里ですからね。
妻:前田敦子役の声優を沢城みゆきがやるアニメとか異次元すぎてすごいよね。
私:キャストやスタッフは良いですからね。あの困難な作品を成功に導くかもしれない偉大な才能が集まっていますよ。もしかしたら、アニソンとJPOPの垣根を越えるような新たな境地を開拓してくるかもしれませんよ。
妻:この冬アニメはアニソンファンとしてはすごい3ヶ月だったけれど、春からも楽しみだね。
私:とりあえず豊作すぎて見きれず、膨大に残っている録画ファイルを片付けて、HDDを空けるところから始めないといけませんね…。