キャラソンに別次元の可能性を拓いた初音ミクーー2012年冬のアニソン③
2012年1月から3月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は3つに分割しており、この記事は<3/3>になります。
キャラソンに別次元の可能性を拓いた初音ミク
私:そしてこの冬には、ここに来て初音ミクブームが訪れました。あのGoogleのCMと「Tell Your World」の出来が良すぎましたからね。
妻:初音ミクに対してGoogle Chromeが何か貢献したわけじゃないのにね。
私:まあ、いいじゃないですか。あれのおかげで、初音ミクって何のアニメのキャラなのかとか聞かれるようになりましたね。そもそもアニソンを聞くからといって、初音ミクやボカロ曲にそこまで詳しいってというわけじゃないんですが。
妻;あの世界は深いので、あまり我々のような素人が語るべきではないんだろうけどね。
私:我々はボカロの世界を語るに足る知識を持っていないですよね。ただキャラソンファンとして、キャラソン視点で初音ミクを見るなら、あれが今期で一番ヒットしたキャラソンであることは間違いないですよね。初音ミクは21世紀に入って、最も楽曲に恵まれたアイドルであり、最も豊富にキャラソンが作られたキャラクターだというべきなんでしょうね。
妻:今更言うことではないかもしれないけれど、ボカロと初音ミクが出てくることで、今までアニメや漫画があってキャラソンがあったのが、まず初音ミクといったキャラがいてキャラソンが出来る時代になったということよね。
私:また、今まで限られた作曲家によって作られてきたキャラソンが、一気に膨大な数の素人を巻き込んで、アマチュアの楽曲作りの中心になったということでもありますね。
妻:その中から名曲が生まれ、プロとしてアニソンやキャラソンを作る作曲家が生まれるというのは必然の流れだったというべきか。
私:今期は初音ミクブームにまるであわせるかのように「ブラックロックシューター」がテレビアニメ化されたわけですが、あれに至っては、キャラとキャラソンがまずあって、それがアニメ化されるという逆転の時代になったとも言えますね。
妻:そうだよね。また「ブラックロックシューター」という曲については、初音ミクがブラックロックシューターというキャラのキャラソンを歌った曲だと言える意味でも興味深い。
私:キャラがキャラソンを歌う時代だっていうことですよね。今回のアニメ化にあたっては、せっかくだからあの曲を初音ミクじゃなくて歌手や声優さんに歌うというのも聞いてみたかったような気もしますけどね。
妻:さすがにあの曲はもう初音ミクのイメージで固まっているから難しかったんじゃないかな。
私:ボーカロイドがキャラソンとして歌った曲が、アニメ化を通じてキャラソンとして人間がカバーするみたいなすごい状況が見れるかとちょっと期待したんですけどね。
妻:そんな風に人間とボカロがある意味で逆転したような世界も来るんだろうね。ニコニコ動画の「歌ってみた」のプロ版だよね。
私:逆転というか、まあそういうふうに双方向に刺激を与えることで新たな文化的地平が開かれていくということなんですかね。まあ、そういう意味では、ボーカロイド3のGUMIも象徴的な存在ではありますよね。
妻:あのキャラの声優は中島愛よね。
私:そうですね。あれはマクロスFとランカちゃんのヒットなしで中島愛のボカロ化であるGUMIが生まれることはなかったと考えると、ランカちゃんあってこそのGUMIであって、あの作品・キャラがあってこそのボカロと言えるようなのものだとも思えるんですよね。
そんな風に、作品とキャラと人間とボカロの関係性がとても複雑に影響しあって、それが豊かで新しい音楽文化を創っていんだと思います。アニメ・ゲームの文化からの派生として生まれたキャラソンが、ついに音楽シーンの中心に立つ時代が来たというべきなのかもしれません。
妻:また大げさにもっともらしいことを言おうとしているだけのような感じがするけどね。そもそも今期のアニメ「ブラックロックシュータ」は面白くなかったし。
私:身も蓋もないことを言いましたね…。否定はできないですが…。
妻:私は第一話の「とにかく汚い色のマカロン」がトラウマになりそうで、見るのをやめたよ。
私:壮絶な鬱アニメでしたね。私は作画が美しいとか、岡田麿里がいつか面白くしてくれるとか、花澤香菜作品はおさえておくべきだとか、自分を様々に鼓舞しながら何とか最後まで見届けましたよ。まあ私の中でのあの作品は、ryoさんが生んだボカロの神曲についての長いプロモーションビデオだったと思うことにしています。
ただryoさん作曲のエンディング「僕らのあしあと」は良かったですね。
妻:ryoさんは今期も大活躍だったよね。傷物語の「ナイショの話」は今までのryoさんの曲とはまた違った感じだったしね。
私:楽曲の幅がひろがったよう思いますね。私の中での一番はギルティクラウンの二期エンディングテーマの「告白」でしたよ。かっこいいピアノ曲に惚れます。ryoさんの曲はどれも外さないですよね。
妻:ボカロ文化出身の天才だね。これからもボカロから偉大なアニソン・キャラソン作家が生まれることに期待してしまうね。
私:そうですね。私が最近ハマっている「ほぼ日P」さんとか、あのキャッチーな楽曲をすさまじい頻度で発表できる才能をぜひキャラソン界で活かして欲しいですね。今期の「サメの死体を投棄するだけの簡単なお仕事です」も素晴らしかったです。
妻:あの2ちゃんを題材にした尖った歌詞を作る感性が、商業ベースに載せられるのかわらないけどね。
私:そうですね…。しかし、キャラソンでこそあの尖った感性は活きるとも思うんですよ。あの人ならSM判定フォーラムを越える杉田智和の新たな名曲をかけそうな気がします。
長くなってしまいましたが、今期の初音ミクブームではボカロについて改めていろいろと考えさせられるものがありました。これらかもボカロが切り開いたキャラソンの可能性について見ていきたいと思います。
2012年春のアニメソングへの期待
私:最後に、この4月からの2012年春アニメへの期待について話したいと思います。
妻:とりあえず、菅野よう子さんの「坂道のアポロン」だね。なにせジャズを題材にした作品だからね。
私:ジャズと菅野よう子といえば「COWBOY BEBOP」ですもんね。あの「Tank!」を越える名作が生まれるかもしれないですね。
妻:それから、とりあえず今期我々の中で最大のヒットアニソンを生んだ「アクエリオンEVOL」と「モーレツ宇宙海賊」はまだ1クールを残しているからね。
私:菅野さんと前山田さんが2クール目にどんな曲をもってくるのか楽しみですよね。
妻:あと私としては「Fate/Zero」のセカンドシーズンだね。1クール目のアニソンは素晴らしかったし。
私:あれはアニメとしても楽しみですね。時代的に後を描いた前作を見ているから結末はわかっている作品なのに、これだけ楽しみなのってすごいですよね。
妻:あのイスカンダルがどれだけ壮絶に死ぬのかという一点だけでも妄想が膨らむよね。
私:そこだけできっと観る価値がありますよね。きっとすごくおいしい死に方をするんでしょうね。そのために小説読まないように耐えてますからね。
妻:あとは、「交響詩篇エウレカセブン」の続編「エウレカセブンAO 」も気になるね。
私:あれも前作は音楽が良かったですもんね。
私が非常に気になっているのは、AKB48を題材にしたSFアニメ「AKB0048」ですね。
妻:あれかあ。私にはアニオタとアイドルオタが壮絶な罵り合いを繰り広げる悲惨な未来しか見えないけどね。
私:非常にそんな予感はしますが、なんせマクロスFで絶対的なアイドル「超時空シンデレラ」を創り上げた河森監督と、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で往年のJPOPの名作アニメにしてみせた岡田麿里ですからね。
妻:前田敦子役の声優を沢城みゆきがやるアニメとか異次元すぎてすごいよね。
私:キャストやスタッフは良いですからね。あの困難な作品を成功に導くかもしれない偉大な才能が集まっていますよ。もしかしたら、アニソンとJPOPの垣根を越えるような新たな境地を開拓してくるかもしれませんよ。
妻:この冬アニメはアニソンファンとしてはすごい3ヶ月だったけれど、春からも楽しみだね。
私:とりあえず豊作すぎて見きれず、膨大に残っている録画ファイルを片付けて、HDDを空けるところから始めないといけませんね…。