「じょしらく」における神前暁と前山田健一の夢の競演ーー2012年夏のアニソン①
2012年7月から9月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は3つに分割しており、この記事は<1/3>になります。
私:まずは2012年夏のアニメソング全体を振り返りたいと思います。
妻:まあ、今期のアニメをアニソンで評価するなら「じょしらく」がダントツだったね。オープニングの「お後がよろしくって…よ」と、エンディングの「ニッポン笑顔百景」ともにすごいレベルの高さだった。
私:それは間違いないですね。
現代日本を代表するアニソン作曲家、前山田健一さんと神前暁さん夢の共演。落語を題材にした三味線が響くアニソンが素晴らしかったですよね。
妻:今期のアニソン的にいうとこのアニメがすごすぎて、他がちょっと霞む感じだったよ。
私:そうですね。7月の初めにこのアニメを見ただけで、今期はこれで十分なんじゃないかって思いましたね。この夏アニメの奇跡だと思っていますよ。
妻:また大げさな。
私:それから、7月に「うたの☆プリンスさまっ♪」の新曲「RAINBOW☆DREAM」が出ましたね。
妻:新作ゲームのテーマ曲として発表された曲よね。
まあ、この曲というよりは、どちらかというとこの夏は、5月末に発売されていた、「ライブ うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVELIVE1000%」のライブDVDを買ったというのが大きかったね。
私:あのライブDVDはすごかったですよね。改めてうたプリの魅力にはまりました。
あのDVD、この夏に何回見たかわからないくらいですよね。
妻:あれを発売直後に買わなかったのは不覚だったね。
私:アニソンファンなら一家に一枚はあるべきDVDですね。改めてうたプリの魅力にやられた夏でもありました。
それから今期のアニソンに話を戻すと、「TARITARI」という学園もの合唱部アニメがありました。
妻:けっこうハマって見ていたよね。歌の上手い声優さんを集めていたやつよね。
私:高垣彩陽の偉大さを改めて感じましたよ。
「心の旋律」っていう曲が涙なしには見れない名曲でしたね。劇中でキャラが合唱曲を歌うというのは、キャラソンに新たな可能性を示したと思います。
妻:それってキャラソンというのかな……。軽音部があたったから、次は合唱部!みたいな、学園ものかつ歌ものの何番煎じかを狙ってみた感じでもあるよね。
泣ける曲といえば、春アニメの「這いよれ! ニャル子さん」のラストに流れた「禍々しくも聖なるかな」も名曲だったよね。
私:あのアニメのキャラソン集「邪神曲たち」に収録されていたやつですよね。何回も聴いてうちにハマりましたね。
妻:この夏は前クールのアニメで、名曲を聞き逃していたっていうのがあったよね。「禍々しくも~」もそうだし、アクエリオンEVOLでAKINOさんが歌う「荒野のヒース」も良かった。
私:あれも見逃していましたね。名曲でした。今年の冬アニメだった「傷物語」の「白金ディスコ」もやっとブルーレイの発売にあわせてフルバージョンが発表されましたね。
妻:アニメ「妖狐×僕SS」の神曲「SM判定フォーラム」と「sweet parade」もやっとフルバージョンが出たしね。
私:この夏は今年の前クールの名曲達を改めて聴くだけでかなり幸せでしたよね。
妻:あと今期のアニメでいうと「ソードアート・オンライン」の主題歌でLiSAの「crossing field」だね。
私:あれはまずアニメとして面白すぎますね。
妻:LiSAさんは、ファースト・シングルが「Fate/Zero」で、セカンド・シングルが「ソードアート・オンライン」とはすごいよね。
私:作品に恵まれていますよね。すでにアニソン界に必要なロックテイストな曲を歌える新たな歌姫として地位を確立しつつありますよね。
アニソンの歌姫といえば外せないのは、この夏に公開された「リリカルなのは」の劇場版第二作の主題歌、水樹奈々の「BRIGHT STREAM」ですね。
妻:映画館に見に行ってたよね。たしかに、アニソンの歴史に残るべき名曲「ETERNAL BLAZE」を生んだ「リリカルなのはA's」の劇場版主題歌として気になる作品ではあったね。
私:水樹奈々さんのすごさを改めて思い知りましたね。改めてアニソンにおける水樹奈々の果たした意義についても考えさせられた夏でもありました。
まあ前置きはそれくらいにして、1つずつ見ていくことにしましょうか。
「じょしらく」における二人の天才作曲家の競演
私:2012年の夏アニメでアニソンファンとして楽しめたのは「じょしらく」でしたね。ガールズ落語アニメと言いながら、女の子がひたすら楽屋裏で日常会話を繰り広げる、久米田康治さん原作アニメですね。
妻:まさかこの作品で、神前暁さんと前山田健一さんという現代日本を代表するアニソン作曲家の競演が見られるとは思わなかったよね。
私:落語という独特なテーマに対して、二人がどんなネタで曲を作ってくるんだろうというところが非常に興味深かったです。
妻:二人とも、いわゆるオープニングらしいとか、エンディングらしいという型にはまらない曲を作れるからね。
私:アニソンを聴く醍醐味って、こういう偉大な才能が、その作品だとかキャラをどんな風にネタとしてアニソンに昇華するのかというところにあると思うんですよね。
妻:そうだよね。
神前暁のキャラソン「お後がよろしくって…よ!」
妻:まずは神前暁さん作曲で畑亜貴さん作詞の名コンビによるオープニングテーマで、登場人物達のキャラソン、極楽女会「お後がよろしくって…よ!」だね。
私:キャラソンとして「ちんとん ちんとんしゃん」って三味線の擬音を口で歌わせるフレーズが秀逸でしたね。
妻:ああいう印象的なフレーズが神前さん楽曲の醍醐味よねえ。落語といえば三味線ってことでいいんだっけ?
私:調べてみると、出囃子というらしいんですけど、落語家が高座にあがるときに三味線なんかで演奏することをいうらしいですよ。落語家ごとに決められたテーマ曲みたいなものもあるらしいですよ。
妻:なるほど。この曲は落語アニメの出囃子として、キャラソンで「お後がよろしくって…よ」と歌わせてみたってことなのね。
私:そういうことかと思います。
妻:二歳の娘があの「ちんとんしゃん」と「よー」を真似するのがかわいらしくてね。
私:あの部分は二歳児にも、ものすごくキャッチーだったようで一生懸命真似していましたよね。パパは萌え死にそうでしたよ。
前山田健一のももクロ楽曲「ニッポン笑顔百景」
妻:そして、エンディングテーマは前山田健一の作詞作曲で、「桃黒亭一門」こと「ももいろクローバーZ」の「ニッポン笑顔百景」でした。
私:あの1分30秒のエンディングを始めて聴いたときはすごい衝撃でしたよ。
まさか、あの「寿限無」をへたうまアイドルが歌うラップとしてあんな見事な楽曲に仕上げてくるとは。
妻:すごい中毒性よね。
私:あの中毒性は容易く国境を超えていったようで、訳もわからずループして聴き続けている外国人の反応をまとめたサイトがすごかったですよ。
http://cosmoneapolitan.blog.fc2.com/blog-entry-209.html
妻:外国人達の賞賛がすごいね。
もともとの古典落語のフレーズの美しさっていうのもあるんだろうね。
私:「寿限無」がアニソン&アイドルソングとなって海外で中毒者を出す時代ってすごすぎますよね。
そして、この三味線の演奏は吉田兄弟ですね。和楽器とアニソンのコラボといういい意味でも軽く文化の壁を超えてきていますよね。
妻:出たね、吉田兄弟好き。和楽器と西洋音楽の出会いとかいって、歴史的建造物でライブをしてお洒落ぶる感じのやつでしょ。
私:私のインスト音楽リスナー歴に対して何で喧嘩腰なんですか。まあ、私は音舞台とか大好きですからね。
この楽曲は、ああいう東西の音楽の融合っていうレベルを超えて、アイドルソングとアニソン、古典落語、西洋音楽、和楽器といろんな文化のジャンルを超えたところに成立していますからね。
妻:音楽における異文化交流の先端に立ってみせた感じかもね。
私:来年あたり音舞台に「ももクロ&吉田兄弟」で出てほしいくらいですよ。アニソンという枠を超えて評価されるべき楽曲だと思います。
またこの曲、歌詞がいいんですよね。繰り返し聞いていると泣きそうになるときがありますよ。
妻:そんな歌だったっけ?
私:「笑おう 笑おう 笑えなくても 笑うしかないでしょ 笑いましょ」とか、あんなやけくそに明るい名曲の中で言われてしまうとなんだか、不覚にも涙腺にくるものがありますね。
妻:それは何か別の感情を込めすぎのような気はするけれど、けっこう真っ直ぐな日本への応援歌になっているところは素晴らしかったね。
私:今年のももクロ楽曲のレベルの高さはすごいですよね。
妻:たしかに「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」「Z女戦争」と来て「ニッポン笑顔百景」だからねえ。
私:正直、前回絶賛していたように「Z女戦争」でやくしまるえつこさんが、まさかあれほどももクロ的楽曲を高いレベルで仕上げてくるとは思わなかったんですよね。正直、前山田さんはお株を完全に奪われたんじゃないかと思って勝手に心配していましたからね。
妻:完全に余計な心配だったね。今回は前作を超えてきた感じでだったもんね。
私:そうでしたよね。また、前回ももクロをAKBに対して、「ももクロはアニソン文化を現実のアイドルシーンに逆輸入しているアイドル」だって言っていたんですが、今回、ももクロが「桃黒亭一門」として作品設定の中でアニソンを歌っているというのにも、象徴的なものを感じました。
妻:作品世界の中から歌っている感じなのよね。キャラソンじゃないのに限りなくキャラソンっぽいというか。
私:そうなんですよね。アニメにキャラとして入り込んで、キャラソン的にアニソンを歌うという営みが、ももクロならではの方法論の凄さだと思いますね。
妻:作品とのコラボ感もすごいよね。
「じょしらく」というこの夏の奇跡
妻:本当に、この「じょしらく」の二曲は、落語をネタにここまで完璧な楽曲を仕上げてくるとはね。
私:アニソンってすごいなと改めて思わせる作品でしたね。アニメ自体は、落語はほとんどやらない落語アニメなんですけどね。
妻:なぜに本編よりもアニソンの方が、そんなに本気で落語に対して本気なんだろうね。このアニメは、オープニング・本編・エンディングを、出囃子・舞台裏・真打登場と見るべきなのかもね。
私:「お後がよろしくって…よ」の「お後」ってエンディングテーマのことだっていうことですかね?
妻:「つまんねーこと聞くなよ」って言っておこうかしら。