神前暁が新境地を示した「M@STERPIECE」と小杉保夫のプリキュア10周年ソングーー2014年冬のアニソン(前編)
2014年1月から3月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
アイドルアニメに神前さんが示した新たな王道キャラソン「M@STERPIECE」「タチアガレ」
私:すっかり暖かくなってきて、多くの新作がひしめく春アニメが始まっているわけですが、このままでは語る機会を失いそうなので、2014年1月から3月までの冬アニメのアニメソングを振り返りたいと思います。
妻:アニソン作曲家好きの我々としては、この冬の最大の事件は、作曲家・神前暁さんの休養が発表されたことだったね……。
<参考記事⇒http://www.oricon.co.jp/news/2034398/full/>
私:ショックすぎましたね。
しかし、神前さんが休養前のこの冬アニメ作品で手がけた、劇場版とテレビでアニメが展開された「Wake Up Girls!」とこの冬に公開された劇場版アニメ「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」の楽曲は、素晴らしかったですね。
妻:「アイドルマスター」や「うたプリ」を始めとして、アイドルもののアニメを本気で名曲なキャラソンが盛り上げる作品が多くなってきたこの時代に、神前さんがこの2作品のアニソンを手がけたというのは、なんだか象徴的な気がしたね。
私:神前さんは、そもそもアイドルマスターシリーズで「GO MY WAY!!」を始めとした神曲によって、アイドルもののキャラソンとはどうあるべきかを作り上げてきた人と言っていいですからね。
そんな神前さんが、アニソンを作るきっかけを作ったという山本寛監督が手がける新たなアイドルアニメと、アイドルマスターのアニメシリーズの集大成であるこの劇場版アニメという、アイドルものとしても特別な2作品に対して、どのような曲を提供するのかというのは、ファンとして興味深すぎました。
妻:神前さんは以前、TVシリーズのアイドルマスターの主題歌「READY!!」を作った際に、「『GO MY WAY!!』みたいだけど『GO MY WAY!!』じゃない曲」っていうオファーを受けたと語っていたのよね。
私:そうですね。神前さん作品には、それこそ「GO MY WAY!!」みたいな名曲は数多くあるんですが、「GO MY WAY!!」がアイドルもののキャラクターソングとしてあまりにも高いレベルの完成形を示してしまったがゆえに、この2作品のテーマを作るにあたっては、それとは違った形でのアイドルソングをどう作るのかっていうのは、大きな課題だったんじゃないかと想像してしまいます。
妻:まあ、神前さんファンの勝手な妄想なのかもしれないけどね。
まずは「Wake Up Girls!」だけど、劇場版アニメの主題歌であり、アニメの第一話でも流れた「タチアガレ!」が名曲だったね。
私:これは新しいパターンで来たなと思いましたね。Aメロ・Bメロは昭和歌謡的なマイナー調でなんですよね。
妻:かっこ良すぎるイントロが終わると、いきなり昭和なメロディに突入するのよね。あの昭和歌謡な掛け合いは、最近の男性もののデュエットキャラソンでよく見る感じよね。
私:キャラの個性を引き立つんですよね。あれを女性アイドルグループに持ち込んでくるとは新鮮でした。
そんなキャラ同士の掛け合いを踏まえて、全員で歌ういつもの神前さんらしい「GO MY WAY!!」的なキャッチーなサビに突入するんですよね。
妻:あの展開は素晴らしかったね。
私:マイナー調の昭和歌謡と「GO MY WAY!!」の融合が生んだ名曲ですよ。
妻:それにしても、アニメ第一話で主人公達があの曲を歌うシーンの唐突すぎるパンチラにはびっくりだったけどね。山本監督の考える新しいアイドルアニメってこれなのかと。
私:パンチラが気になりすぎて、曲が全く頭に入ってこないんですよね。
劇場版だとあのシーンには伏線があって、ストーリー的には主人公達の覚悟を示した意味のあるパンチラらしいんですけどね。
妻:覚悟のパンチラというのがそもそも私の理解を超えているけれど、その伏線すら抜きにして、アニメ第一話に入れてくるあたりが、なんというか安定のヤマカン品質よね……。
私:まあ、神前さんにこの曲を作らせたことは、山本監督の大きな功績だと思いますね……。
次に劇場版アニメ「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」ですが、神前さん作曲の主題歌「M@STERPIECE」が名曲すぎました。
妻:あの映画、地元では公開していないので、わざわざ仕事で大阪に出張に行った時に観に行ってたもんね。
私:やっぱり神前さんファンとしては、見逃せない映画かなと。
あの映画、2時間以上あるんですが、ラストで流れる「M@STERPIECE」が見事すぎて、めっさ泣けますからね。
妻:あの作品で泣くのね……。
私:なんでこういう曲が今までアイドルマスターにはなかったんだろうという名曲ぶりに、神前さんがこの作品に掛けた思いが伝わってくるようで、こみ上げてくるものがありましたよ。
妻:確かに神前さんのアイドルマスターの曲で、こういう感じのミディアムテンポな曲ってありそうでなかったのよね。
私:そうなんですよね。音楽的なところは不勉強でよくわからないんですが、これは現代風のディスコ調音楽というべきものなんですかね。
妻:昨年、AKBファンならずともその名曲ぶりを認めざるを得なかった「恋するフォーチュンクッキー」に通じるところはあるよね。
私:確かにあの雰囲気をアイドルマスターに持ち込んで、完璧なキャラソンに仕上げてみせた感じですね。
「GO MY WAY!!」がアップデンポに盛り上げるのに対して、「M@STERPIECE」は全くスキのないメロディの美しさで、すごいノリの良さを実現してみせるんですよね。
キャラ声のソロ歌唱パートを踏まえて、全員でタップリとあのサビたっぷりと歌いあげるのが、いかにもグランドフィナーレという感じで、あの場面とのシンクロ具合がすごいんですよ。
妻:アイドルマスターシリーズで「M@STERPIECE」って、一度きりしか使えず、使うことにかなり勇気が必要な曲名だと思うけれど、それに相応しい名曲だったね。
私:アイドルマスターシリーズの一つの区切りであり、曲調としても新境地を拓いたという意味で、新たな出発を思わせるというのがすごいと思います。
妻:2曲とも、神前さんらしい王道アイドルソングでありながら、今までなかったと思わせる名曲だったね。
神前さんにはゆっくり休養して、またアニソンの世界に帰ってきてほしいね。
私:ぜひ日本のアニソン界に、更なる「輝きの向こう側」を見せて頂きたいです。
プリキュア10周年を彩る小杉先生の新たな名曲
私:2月にはプリキュアの新シリーズ「ハピネスチャージプリキュア」が始まりました。
あのアニメで、3歳の娘が初めてプリキュアに出会って、めっさハマっているわけですが、主題歌がいいんですよね。
妻:ついに娘と同じアニメを見ながら、同じアニソンにハマる日が来てしまったね。
まずはオープニング・テーマの「ハピネスチャージプリキュア!WOW!」の中毒性がすごいね。
私:プリキュアらしい異常に耳に残るサビも当然素晴らしいんですが、あのBメロとサビをつなぐ部分の、歌とキャラクターのセリフが掛け合う展開がいいんですよね。
「このキュアラブリーは無敵なんだから!」が秀逸すぎます。
妻:あそこまでやるんだった、もう中島愛が歌うキャラソンにしちゃえばいいのにね。
私:もうキャラソンって言ってしまっていいような気がしますね。あの掛け合いなしに成立しないですからね。
妻:エンディング・テーマの「プリキュア・メモリ」も異常なクオリティの3DCGのダンスとあわせて、子どものみならず大きなお友だちの話題をさらっていたね。
プリキュア10周年を記念した、これまでの主題歌を取り入れた歌詞も良かった。
私:この10年、歴史に残るべき名曲「ふたりはプリキュア」に始まり、プリキュアシリーズを支えてきた小杉保夫先生はすごいですよね。
妻:この前まで娘がハマって踊りまくっていた、NHK・Eテレ「いないいないばあ」の名曲「わ〜お!」も小杉先生の曲だったしね。
私:小杉保夫って「お嫁サンバ」なんかのJ-POPも作曲している方なんですが、子育てを始めてEテレを見るようになると、子ども向け番組で発揮されるその作曲の天才ぶりを改めて思い知ることになりますよね。
妻:「いないいないばあ」を始めとしたEテレ番組から、「プリキュア」、そして「クレヨンしんちゃん」の「おらは人気者」まで小杉先生だからね。
日本の子どもたちの魂に刻まれる楽曲を生み出しているよね。
私:いつか子ども向け番組における名曲については改めてじっくりと語らなければならないと思っているんですが、小杉先生はその分野における最重要人物ですよね。
プリキュアシリーズについて言っても、小杉保夫さん以外の主題歌もあるんですが、間違いなくこれはプリキュアの歌だと思わせる楽曲の統一感を持たせながら、コンスタントに名曲を生み出せると思いますね。
「ハピネスチャージプリキュア」はそんなプリキュア10周年を彩るに相応しい楽曲だと思いますね。
<後編に続く>