上松範康の最高傑作「不死鳥のフランメ」からハーレムアニメの生んだ奇跡のユニゾン「14 to 1」までーー2013年後半のアニソンを振り返る(前編)

2013年7月から12月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。

 

この半年を代表する二曲のアニメソング

私:正月の暇にまかせて、2013年の7月以降のアニメソングについて振り返りたいと思うのですが、まずはこの半年間で最も素晴らしかったアニメソングは何でしょうか?

 

妻:上松範康さん作曲でアニメ「戦姫絶唱シンフォギアG」第1話の挿入歌「不死鳥のフランメ」と、神前暁さん作曲でアニメ「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン」の3番目のオープニングテーマ「木枯らしセンティメント」だね。

 

私:確かにキャラソン好きでアニソン作曲家ウォッチャーの我々にとって、その2曲は甲乙つけがたいですね。

猛暑だった去年の夏を象徴するような熱いキャラソンと、この年末の嵐のように我々の度肝を抜いた異色のキャラソンでしたね。

 

妻:2013年の夏アニメと秋アニメの代表作として、意外と季節感のある二曲よね。

そして、この半年の日本のアニソンも、上松さんと神前さんという、二人の天才作曲家を中心に回っていたと言っていいと思うね。

 

私:そうですね。それではこの二曲を中心に、その他、昨年を代表するロボットアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」や、13人の兄弟と恋する逆ハーレムアニメ「BROTHERS CONFLICT」、レトロなアニメファンを熱狂させた「キルラキル」を彩った楽曲達から、キャラソンファンとしては外せないドラマ「あまちゃん」における「潮騒のメモリー」まで、外せない名作達を含めて、順番に振り返っていきたいと思います。

 

続きを読む

アニソンファンとして語る宮崎駿の「風立ちぬ」ーー「風立ちぬ」は女子高生が邪神を退治する王道のファンタジーだった

f:id:joe519:20131014055832j:plain

 

私:私が2013年夏のアニソンの最高傑作の一つと考えている宮崎駿風立ちぬ」のエンディングテーマ「ひこうき雲」について語りたいと思います。

 

妻:ちょっと待って。そもそもあれをアニソンと呼ぶべきなの? もともと松任谷由実の代表曲でJ-POPの歴史に残る名曲よね。

 

私:まだ「荒井由実」名義だった初期の名曲ですよね。松任谷由実はインタビューであの曲について「高校生のときにつくった」と言っていました。

 

妻:それは天才すぎるね……。しかし、過去の名曲を持ってきただけで、アニソンとして評価するというのはいかがなものかと思うね。

 

私:いや、「風立ちぬ」という映画は、あの「ひこうき雲」という歌こそが中心の作品ですからね。

 

妻:あれが中心なんだ。

 

私:そうです。むしろそういう見方をすることによってこそ、初めて「風立ちぬ」という映画は何だったのかということが理解出来るんじゃないかと思うんですよ。

 

妻:なんだか大げさにいうね。

続きを読む

「風立ちぬ」で松任谷由美の偉大さを知る

宮崎駿の「風立ちぬ」を観る。

以下、ネタバレ感想。

 

序盤、何事かを成し遂げた人による、人生とはこうあるべきだという物語に見えて、素直に楽しめなかった。

過剰にそういう見え方がしてしまうところが、自分のダメさを表しているんだろうなあと思える作品、そんな風に感想を綴ろうかと思っていた。

 

中盤、宮崎駿のまさかのベタベタなラブコメ展開に悶える。宮崎駿結核の美少女とか反則すぎる。

 

終盤、あっさりとした幕切れに唸る。

人生を掛けた夢は兵器となり、美しい飛行機は敗北を止めることは出来ない。

何かを込めたくなりそうな物語について、反戦を煽るわけでもなく、テクノロジーを呪うわけでもなく、偉業を称賛するでもなく、ただただエンドロールで松任谷由美の「ひこうき雲」名曲ぶりだけが圧倒的な説得力を放ちながら、流れて終わる。

そんな幕切れのぽっかりとした感じと、そんなぽっかり感を余す所なく受け止める「ひこうき雲」がすごい。

松任谷由美、天才過ぎる。

2013年春のアニメソングを振り返る(後編)ーー世界を震撼させた空耳ソング「紅蓮の弓矢」

2013年4月から2013年6月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事の後編

<前編はこちら>

 

世界を震撼させた空耳ソング「紅蓮の弓矢」

 私:後半は、2013年春アニメの主にキャラソン以外について語りたいと思うのですが、春のアニソンが世の中に与えたインパクトを客観的に評価するならば、間違いなく一番に上がるのは、「進撃の巨人」の主題歌「紅蓮の弓矢」ですよね。

  

 

妻:そうなんだろうね。私はあのアニメ、怖すぎて見れなかったけど。

 

私:それは人生の損失だと思いますよ。まあ結構残酷なので、2歳の娘には見せないように気をつけていたんですが、私が気づかぬうちに、後ろからそっと見ていたみたいですね。

 

妻:ちょっとトラウマになっているみたいだよ。夜泣いて起きるから、どんな夢だったのか聞くと「怪物に食べられる」って言ってるもん。

 

私:それは確実に巨人に襲われていますね。反省しないと……。

進撃の巨人に話を戻すと、「壁の向こうから襲いかかる巨人に立ち向かう」という物語設定が「引きこもり願望のオタクに押し寄せる日常生活」から、「領土問題やTPPをせまられる現代日本」まで、様々な人々に多様な現実を投影され、世代や国境、オタクと一般人の壁を踏み越えて大ヒットしました。

 

妻:何か外からの圧力に対抗する話なら何でも投影可能だもんね。

主題歌の「紅蓮の弓矢」も、ニコニコ動画で多様な替え歌が投稿されたのが話題になったよね。

 

私:こちらも「ブラックな労働環境に立ち向かう社畜」から、「重課金ネトゲに立ち向かうネトゲ廃人」まで、何でもありな感じでしたよね。

あれはこの曲の何を言っているのかわからない歌詞がよかったんでしょうね。

 

妻:曖昧な歌詞が多様な解釈を産んで、やはり色々な現実を投影されたというのは、このアニメ自体がウケたのと同じ構造なんだろうね。

 

私:確かにそういう意味では、作品とマッチした主題歌でしたよね。何かに立ち向かうということにどこまでも熱く、そして、多様な解釈や投影を呼ぶ曖昧さというのが、この作品と主題歌の素晴らしさですね。作品の世界的なヒットにあわせて、まさに世界を震撼させた空耳ソングだったと言えると思います。

何だかよくわからないんだけども景気が回復基調にあるという現在の日本のアベノミクス的な状況ともリンクするようで、優れて現代的な作品だったというべきなんでしょうね。

 

妻:もっともらしくこじつけてみたね。まあ、そういう多様な解釈を可能にするところがこの歌の懐の広さよね。

エンディングテーマの日笠陽子の歌う「美しき残酷な世界」も良かったよね。

続きを読む

2013年春のアニメソングを振り返る(前編)――まるでアニソン界にやってきたアベノミクスだったな

うたプリ第二期の神曲とは

私:2013年4月から6月のアニソンを振り返りたいと思います。すごい三ヶ月でしたね。

 

妻:そもそも面白いアニメが多すぎたよね。録画の消化が追いつかない…。

 

私:今期はアニメ「進撃の巨人」の制作のために大量投入された「作画兵団」が話題になりましたが、今期のアニメファンは、押し寄せる名作アニメに録画容量が追いつかない3ヶ月を過ごしましたよね。「馬鹿な…。このハードディスクは3テラバイトだぞ!」って感じでしたよ。

 

妻:そんなアニメのレベルの高さに連動して、あらゆるジャンルのアニソンについてクオリティが高かったよね。いつもと同じ様な基準で名曲を選ぶと挙げきれない。

 

私:まるでアニソン界にやってきたアベノミクスですよ。アニメ「進撃の巨人」を見て、これが自民党のいう「第三の矢」なのかと思いましたからね。

 

妻:まあ、あの作品みたいなのが、世界に誇るクールジャパンなんだろうね。

 

私:そんな名曲が多すぎる今期ですが、敢えてこの3ヶ月のナンバーワンのアニソンを挙げるとすると何でしょうか?

 

妻:「うたの☆プリンスさまっ♪」第二期の聖川真斗こと鈴村健一のキャラソン恋桜」だね。

恋桜

恋桜

 

私:そう来ましたか。確かに鈴村健一が歌う演歌は強烈なインパクトでした。ついに放送された「うたプリ」2期はキャラソンファンにはたまらなかったですね。主題歌の「マジLOVE2000%」も素晴らしかったですね。

 

続きを読む

最近のアニソン・キャラソンを聴くなら基本として押さえたい7人の作曲家

作曲家で聴くアニソン・キャラソンのススメ

メディアミックスという言葉が使われるようになって久しい昨今、アニメやゲームにおいてアニメソング・キャラクターソングが数限りなく生み出され続けていますが、「アニソン・キャラソンなんて所詮その作品・キャラクターを愛するファンのためだけの内輪向けの音楽だ」なんて思っていませんか?

もちろんそういう面があることは否定しませんが、それだけで片付けてしまうのは、あまりにもったいないです。

私はアニソン・キャラソンの作曲とは、日本で花開いたキャラクター文化の魅力を音楽に変換する高度かつ先進的な文化活動だと考えています。 

 

100年後の日本の歴史の教科書には、平成の文化史についてきっと以下のように記載されるはずです。

 

平成の日本文化を一言で表す言葉は「萌え」であり、それは文学・映像・音楽の世界に幅広い影響を与えた。音楽の世界では「萌え」を音楽化したキャラクターソングが隆盛を極め、菅野よう子上松範康神前暁らが優れた楽曲を生み出した。

 

そこで私は、作曲家を意識してアニソン・キャラソンを聴くということを強くおすすめしたいと思っています。

今の日本のアニソン界には、卓越したセンスを持った多様な作曲家がいます。

そんな作曲家を知り、作曲家という横串を通してアニソンを聴くようになると、「次にこの作曲家はこの作品・このキャラをどう料理し、音楽に昇華していくのか」という楽しみ方が見えてくると思います。

大げさな言い方になりますが、それはキャラクター文化と音楽の出会いが人類に何をもたらすのかという、日本が世界に誇る文化の先端を垣間見ることではないかと私は考えています。

 

この記事では、そんな「作曲家で聴くアニソン・キャラソン入門」として、優れた楽曲を生み出し続けている作曲家の中から、ぜひ押さえておきたい基本というべき天才7人を取り上げて紹介します。

 

続きを読む

「イクシオンサーガDT」のアニソンを絶賛するーー2012年秋〜2013年冬のアニソン②

2012年10月から2013年3月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事・その2

 

 

私:2012年10月〜2013年3月までの半年間で、我々がアニソン的に最も輝いていたと考える「イクシオンサーガDT」について語りたいと思います。

私はこの作品のアニソンは、日本のキャラクター文化の生んだ奇跡だと考えているわけなんですが、まずはアニソンの前に、アニメ作品としての「イクシオンサーガDT」について触れたいと思います。

これはカプコンのオンラインゲーム「イクシオンサーガ」のメディアミックス作品だったんですが、元のゲームの世界観なんて殆ど無視した、割り切りの良さが光る良作でしたね。

 

妻:そもそもベータテスト中のオンラインゲームが原作って無理があるもんね。オンラインゲームの名を借りた、ただのキャラアニメになっていたよね。

 

私:監督の高松信司さんと脚本の大和屋暁さんはアニメ「銀魂」を作ったコンビですからね。あの不条理なギャグアニメのセンスが、本作でも遺憾なく発揮されていました。

 

妻:ゲームのプロデューサーがインタビューの中で、「アニメは煮るなり焼くなり好きにしてください」と言って二人に頼んだと語っていたからね。カプコンもかなり冒険した感じよね。

 

私:二人の主要キャラが、童貞を捨てたい主人公「DT」と、主人公にタマを潰されて復讐に燃えるライバル「ED」ですからね。

 

妻:完全に下ネタよね。基本的には、その二人を始めとした豪華声優陣が演じる濃いキャラクター達が、様々な形で変態性を競うという形で物語が進行するのよね。

 

私:エンディング・テーマの歌詞に「安全なものほどつまらない」という言葉が出てくるんですが、まさにそれを地でいっていたアニメだと思います。

 

妻:確かにそんなアニメの「突き抜けた割り切り」とでもいうべきものがあの優れたアニソンを生んだ背景にあるのは間違いないね。

 

私:そうですね。ではその本題のアニソンに話をすすめたいのですが、まず度肝を抜かれたのは、その主題歌でゴールデンボンバーと声優陣がコラボしたユニット「ゴールデン・イクシオン・ボンバーDT」が歌う「DT捨テル」と「レッツゴーED」でした。 

DT捨テル

DT捨テル

  • ゴールデン・イクシオン・ボンバー DT
  • Anime
  • ¥250
レッツゴーED

レッツゴーED

  • ゴールデン・イクシオン・ボンバー DT
  • Anime
  • ¥250
続きを読む