逃げ恥の恋ダンスはアニソンの文脈で捉えてこそ素晴らしい

キャラソン好き夫婦がこの冬にハマったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のエンディングを絶賛します。

 

私:ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が面白かったですね。

 

妻:2016年の10月〜12月は、アニメファン的には「うたの☆プリンスさまっ♪」や「夏目友人帳」の新作、「3月のライオン」「ユーリ!!! on ICE」など、けっこう粒ぞろいだったけれど、まさかドラマにハマるとはね。

 

私:確かに「オカルティック・ナイン」や「ドリフターズ」「ブレイブウィッチーズ」からポケモン新作まで、録画したアニメを消化しきれない中、今期の我々を虜にしたのは「逃げ恥」でしたよね。

 

妻:火曜日が来るのが待ち遠しかったからね。週に一回、楽しみに待てる作品があるのは人生に潤いを与えるよね。

 

私:ハグの日を心待ちにしていたのは私達のほうでしたよね。
そして、このドラマには、我々のようなアニメファン、そして我々のような世代をハマらせる工夫がありました。

 

妻:「シンジ君」との過去の恋愛を振り返るエヴァ演出や、選択肢で平匡さんを攻略する乙女ゲー演出、Eテレサザエさんの小ネタをさらっと取り入れてきたりね。

 

私:主人公の叔母「ゆりちゃん」のキャラ設定もいいんですよね。恋愛ドラマを素直にみるには歳をとりすぎた我々は、ゆりちゃん的視点で主人公達を見守っている感じですよね。

 

妻:ゆりちゃん演じる石田ゆり子さんは、アニメファン的には、もののけ姫のサンの声の人だからね。

 

私:サンがアシタカと別れ、その後結婚せずにキャリアウーマンのゆりちゃんになったと考えると、なんだか感慨深いものがありますね。

 

妻:ゆりちゃんが結婚しなかったのはアシタカが忘れられなかったせいなのね。

 

私:それはエボシ御前の呪いでもあると捉えるなら比喩としてあながち間違っていない気がしますね。

そして、我々とか少し上の世代の人はゆりちゃんに感情移入して、きっとそれ以上の世代になるときっと主人公達の親の世代の視点でこのドラマを観ているんでしょうね。

 

妻:そのあたりのドラマの作り方が丁寧よね。結婚というテーマの普遍性というべきか。

 

私:まあ、このドラマの素晴らしさを挙げ出すと、きりがないので本題に入りたいのですが、ドラマを盛り上げるのは、なんといってもエンディングで流れる星野源さんの「恋」でしたよね。


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妻:「恋ダンス」で話題をさらった神エンディングよね。

 

私:私はあのエンディングをみると、3曲のアニソンエンディングを思い出すんですよ。

 

妻:3曲のアニソン?

 

私:涼宮ハルヒのエンディング「ハレ晴レユカイ」、血界戦線の「シュガーソングとビターステップ」、そして「BROTHES CONFLICT」の「14 to 1」です。

 

妻:どれも踊るアニソンエンディングの名曲達よね。しかし、無理やりアニソンに結び付けなくてもいいんじゃない?

 

私:いや、あのエンディングはアニソンの文脈において捉えてこそ素晴らしいと思うんですよ。

私は、この「恋ダンス」エンディングこそ、涼宮ハルヒの「ハレ晴レユカイ」がアニソン界に投げかけた問題に対して、「シュガーソングとビターステップ」ばりの名曲をキャラソンとして実現しながら、「14 to 1」が示したメタフィクションの構造を活かして答えてみせた、極めて現代的な神エンディングだと思うんですよ。

 

妻:なんだか意味がわからいけど、とりあえず話だけは聞こうかしらね。

 

私:先にあげた3曲と照らし合わせながら、この恋ダンスがいかに素晴らしいかについて話していきたいと思います。

 

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キャラソンファンとして語る「アナと雪の女王」ーー自己実現をキャラソンでエンタメ化したディズニーの魔法

アナと雪の女王」の「ありのままで」をオタクな妻と絶賛します。

作品のネタバレを含みますので、未見の方にはおすすめしません。


この春最高のキャラソンだった「ありのままで」

私:もう7月も終わろうとしているところですが、そろそろ2014年4月から6月のアニソンを振り返りたいと思います。この春のアニソンといえばなんと言っても「アナと雪の女王」の「ありのままで」でしたよね。

 

妻:まさか、この春の最高のアニソンをディズニーアニメに持っていかれるとは思わなかったね。

 

私:作曲家の神前暁さんと上松範康さんを敬愛し、日本のキャラソンは人類のキャラクター文化の最先端にいると信じている我々としても、あの曲は認めざるを得なかったですね。
この春は、ボカロP出身で異次元の活躍見せているじんさんの「メカクシアクターズ」がアニメになったり、「うたの☆プリンスさまっ♪」のライブDVD第3弾が発売されるなど、アニソンファンには外せない話題の揃った3ヶ月だったと思うのですが、「アナと雪の女王」は別格でしたよね。

 

妻:まあ「アナと雪の女王」の日本公開が3月14日に公開ということなので、厳密にいうと春アニメと呼ぶべきかは微妙なところだけど、この3ヶ月間で最も話題をさらったアニメであり、アニソンであったのは間違いないしね。

 

私:「ありのままで」の素晴らしさについては、この春に様々に言い尽くされた観もありますが、私としてはキャラソンファンとして観点から「今期最高のキャラソンとしての『ありのままで』」を語ってみたいところですよ。

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「鬼灯の冷徹」に流れる日立の樹から「黒子のバスケ」の男前キャラソンまでーー2014年冬のアニソン(後編)

2014年1月から3月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事の後編です。

(⇒前篇はこちら) 

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アニメ「鬼灯の冷徹」に流れる日立の樹、キャラソンファンからみた佐村河内守

私:その他にこの冬の印象的な作品を挙げるとすると、何でしょうか?

 

妻:アニメ「鬼灯の冷徹」のアニソンは良かったよね。

 

私:オープニングテーマの「地獄の沙汰も君次第」は地獄の名称を並べた独特なノリの曲が良かったですね。あれはYOUR SOUND IS GOODっていうオルガンインストバンドの方の作曲らしいです。

 

妻:エンディングテーマの上坂すみれの曲は大槻ケンヂ作詞だったし、けっこうマニアックな音楽だったよね。

しかし、私はなにより第一話のエンディングテーマ「大きな金魚の樹の下で」を挙げたいね。まさか「日立の樹」のパロディで来るとは。 

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神前暁が新境地を示した「M@STERPIECE」と小杉保夫のプリキュア10周年ソングーー2014年冬のアニソン(前編)

2014年1月から3月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。

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アイドルアニメに神前さんが示した新たな王道キャラソンM@STERPIECE」「タチアガレ」

私:すっかり暖かくなってきて、多くの新作がひしめく春アニメが始まっているわけですが、このままでは語る機会を失いそうなので、2014年1月から3月までの冬アニメのアニメソングを振り返りたいと思います。

 

妻:アニソン作曲家好きの我々としては、この冬の最大の事件は、作曲家・神前暁さんの休養が発表されたことだったね……。

<参考記事⇒http://www.oricon.co.jp/news/2034398/full/

 

私:ショックすぎましたね。

しかし、神前さんが休養前のこの冬アニメ作品で手がけた、劇場版とテレビでアニメが展開された「Wake Up Girls!」とこの冬に公開された劇場版アニメ「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」の楽曲は、素晴らしかったですね。 

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天才アニソン作曲家・神前暁を語る(後編)ーー「モノクローム」と「三十路岬」

キャラソン好きの夫婦が、多数のアニメソングやゲームソングを手がける作曲家・神前暁さんを対談形式で絶賛する記事の後編。

前編はこちら) 

 

ソロのアカペラで歌えるバラードというメロディメーカーの到達点「モノクローム

私:さて、続いては神前さんのバラードについて語りたいのですが、そもそも昔から神前さんのバラードの名曲は多いんですよね。

 

妻:アイドルマスターの「my song」なんかは本当にいい曲よね。

 

私:泣けますよね。PSPゲーム「探偵オペラミルキーホームズ」の「聞こえなくてもありがとう」という曲もありますよね。

この2曲は卒業シーズンに日本中の学校で歌われるべき名曲達ですよね。

 

妻:まあ、実際にそんな学校があったらマニアすぎる選曲に驚くけどね。

でも曲だけの良さでいうと、そこらへんの卒業式ソングに劣っていないよね。

 

私:劣っていないどころか、定番にして毎年歌い継ぐレベルだと思いますよ。あんな曲、卒業式で歌ったら全員で号泣ですよ。

 

妻:キャラソンで号泣する卒業式……。

 

私:卓越したメロディーメーカーである神前さんのバラード曲が素晴らしいのは、まあ当然というべきかもしれないのですが、そんな神前さんがバラードの新境地を示したのは、アニメ「STAR DRIVER 輝きのタクト」の「モノクローム」でした。

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天才アニソン作曲家・神前暁を語る(前編)ーー「GO MY WAY!!」と「God Knows…」と「もってけ!セーラーふく」

キャラソン好きの夫婦が、多数のアニメソングやゲームソングを手がける作曲家・神前暁さんを対談形式で絶賛します。

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作曲家・神前暁とは 

私:今日は我々がキャラソンに目覚めるきっかけになった作曲家、神前暁さんを取り上げて、力の限り絶賛したいと思います。

 

妻:神前さんがいなければ、これほどアニソンにハマることもなかったと思うね。

 

私:そうですね。私はキャラソン・アニソンについて、「作曲家で聴く面白さ」というものを常々主張しているわけですが、そんな価値観を教えてくれたのは神前暁さんでしたよね。

まず簡単に神前暁さんを紹介すると、ゲーム会社のナムコに所属してゲームソングの世界でそのキャリアを開始し、アイドルマスターなどの楽曲を手がけたあと、「涼宮ハルヒの憂鬱」でアニメソングの世界にデビュー。その後「らき☆すた」や「化物語」シリーズ等、多数の作品で劇伴やアニソン・キャラソンの作曲を手がけてきました。

 

妻:経歴を軽くなぞっただけで、それがそのままキャラクターソングの歴史を象徴するようなすごい作品達よね。

 

私:作曲家の田中公平先生は、かつてNHKの番組で神前さんと共演した際、「これからのアニソンはキャラソンだ」と言い切った上で、神前さんのことを「これからのキャラソンを担う人」と絶賛しました。

 

妻:「BS熱中夜話・アニメソングナイト 」の第二回だったよね。あのころのNHKのアニソン番組は素晴らしかった。

 

私:そうですね。震災後にやや下火になってしまったんですが、あの頃のNHKは確実にアニソンという時代の先端の啓蒙者として、すごいレベルの番組を作っていましたね。

 

妻:我々も基本的には、あそこで示された価値観の延長線上を生きているような感じだもんね。

 

私:それでは冒頭の話はこれぐらいにして、具体的な曲の紹介に入っていきたいと思います。

神前さんの楽曲って、非常に多彩ではあるんですが、私は大きく5つぐらいのレパートリーに大別出来るんではないかと思っています。ここではその各レパートリーの代表曲を取り上げて、神前さんの素晴らしさを振り返るとともに、神前さんに象徴される現代のキャラクターソングの魅力というものに迫っていきたいと思います。

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キャラソンに溢れる昭和歌謡の世界・「木枯らしセンティメント」から「潮騒のメモリー」までーー2013年後半のアニソンを振り返る(後編)

2013年7月から12月までのアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返る記事の後編です。

(⇒前篇はこちら

 

鬼物語にキャラソンがなかった理由

私:昨年の7月から12月まで2クールにわたって放送された西尾維新の<物語シリーズ>セカンドシーズンについて語りたいと思います。

 

妻:この作品は、毎回異なる女の子キャラをメインに据えた複数の物語からなっていて、それぞれのキャラクターについて神前暁さんが作曲したキャラソンがオープニングテーマとして使われているのよね。

 

私:キャラソンの名手である神前さんの技が遺憾なく発揮されるキャラソンファン垂涎の作品ですよね。

 

妻:そもそも「神前さん=キャラソンの名手」という評価が確立されたのがこの<物語シリーズ>だろうからね。

 

私:セカンドシーズンでは「鬼物語」がアニメ化されるということで、ついに坂本真綾の演じる吸血鬼である「忍ちゃん」のキャラソンが来るんではないかということで、夫婦で大いに盛り上がっていました。

 

妻:二年ぐらい前から同じ話をしている気がするけど、坂本真綾って歌手としても活躍している声優だけど基本的にキャラソンは歌わないので今回はどうなるのかということと、現代アニメ音楽の巨匠・菅野よう子のアニソンのイメージが強い坂本真綾に対して神前さんがどんな曲を書いてくるのかという2点で、アニソンファンとしては注目を続けてきたのよね。

 

私:そうなんですよ。しかし、鬼物語では、ついに坂本真綾ソングは流れなかったんですよね……。

 

妻:まさかオープニングテーマなしとはね…。あれが昨年の秋、最も落胆した出来事だね。やっぱり坂本真綾はキャラソンを歌わないのかと。

 

私:しかし、私はあれについては、別の見方をしているんですよ。

 

妻:というと?

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