菅野よう子のアクエリオンEVOLと前山田健一のモーレツ宇宙海賊ーー2012年冬のアニソン①
2012年1月から3月のアニメソングをオタクな妻との対談形式で振り返ります。
今回は3つに分割しており、この記事は<1/3>になります。
私:前回は去年1年分をまとめてだったわけですが、今回は2012年1月から3月の1クール分のアニソンを振り返って語ってみたいと思います。
妻:アニソン好きには濃い3ヶ月だったからね。
私:そうですね。前回、今期への期待を語っていた時には、キャラソン作曲家好きの我々として、今をときめく神前暁さん・菅野よう子さん・上松範康さんのそれぞれの作品が揃い踏みだということに注目していたわけですが、この三ヶ月の全体を振り返っていかがでしたか?
妻:菅野よう子さんはやっぱりすごかった。そして、今期最も神がかっていたのは、前山田健一さんだったね。
私:確かに、今期はなんといっても、その二人の「アクエリオンEVOL」の主題歌「君の神話~アクエリオン第二章」と「モーレツ宇宙海賊」の主題歌「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」でしたね。
妻:間違いないね。この2曲は別格にすごすぎた。
私:最初の3ヶ月でこの2曲が出るとは、今年はすごい年になりそうですね。そして、上松さんと神前さんにもそれぞれ大変興味深い曲がありました。
妻:その二人だと「逆光のフリューゲル」と「白金ディスコ」だよね。あと、キャラソンとしてはアニメ「妖狐×僕SS」を手がけたCHI-MEYさんがすごかった。
私:杉田智和さんの歌う「SM判定フォーラム」は素晴らしかったですね。たしかにあのアニメのキャラソンは良作が多くて、日本のキャラソン界にまた新たな才能が舞い降りたという感じでした。
妻:そして、ここに来て世間に初音ミクブームが訪れるとはね。
私:GoogleのCMに始まった初音ミクブームに合わせるかのように、「ブラック★ロックシューター」がTVアニメ化され、supercellのryoさんは今期いろんな作品で多彩な活躍をしていましたからね。改めてボーカロイドの力を思い知らされた3ヶ月でもありました。
まあ前置きはこれぐらいにして、一つずつ見て行くことにしましょうか。
アクエリオンEVOLの新たなる神話の幕開け・管野よう子はやっぱりすごすぎた
私:まずは、アクエリオンEVOLの主題歌「君の神話~アクエリオン第二章」ですね。前作のテーマ曲が菅野よう子さんが自ら創りあげたアニメソングの金字塔「創聖のアクエリオン」で、昨年まで同じ河森監督とのコンビで楽曲的にも高く評価されていた「マクロスF」をやっていたわけだからね。このテーマ曲に対するファンの期待はすごいものがあったと思うんですよ。
妻:そうだよね。そして、そんなファンの高すぎる期待値を完全に超えてきたよね。
私:このレベルの曲を毎年のように量産できるって、どれだけすごい才能なんだって思いますよ。
妻:このアップテンポな曲調がまた劇中のロボットの合体シーンとシンクロするんだよね。この曲が初めて流れる一話の合体シーンの盛り上がりは、神がかっていたよ。
私:そうそう。この曲の疾走感がロボットアニメを知り尽くしていますよね。アニメの第1話は盛り上げるだけ盛り上げて、この曲で合体して終わりですからね。このアニメでは既に合体は敵と戦うための手段じゃなくて、合体それ自体が目的になっている感じでした。
妻:さすが河森監督はこの作品のテーマを「少子化対策です」って言い切っていただけのことはあるよね。
私:まさに合体がテーマであって、この曲は合体の賛歌というべきなんでしょうね。
妻:生命力がありすぎて、すごい中毒性だったよ。しばらく頭から離れなかった。
私:私もしばらくテンションがあがると脳内で勝手にこの曲が再生されるっていう症状に冒されていました。むしろこの曲が頭の中で流れると「私は今テンションがあがっているんだな」って逆に気づくぐらいでしたよ。
妻:菅野よう子の音楽と河森監督のロボットアニメの高すぎるレベルでの融合は、現代アニメの頂点にあると思うね。
私:まさにマクロスFに続く、新たなる神話の幕開けだったと思います。まあマクロスFファンとしては、劇場版「サヨナラノツバサ」でシェリルさんがこの曲を歌うところも見てみたかった気もしますが。
妻:確かに。でもそれだと最後にすべてをシェリルさんが持ってってしまうからねえ。まあ、あの作品はランカちゃんの「放課後オーバーフロウ」で良かったじゃないかな。
それからアクエリオンEVOLのエンディングテーマの「月光シンフォニア」もいい曲だよね。他にない雰囲気のある曲でね。
私:なんだか神話の荘厳さを感じさせる素敵な曲ですよね。あまり聞いことのないような曲をこの完成度で形にしているのが流石だという気がしますね。挿入歌の「イヴの断片」も良かったです。
妻:イントロがかっこよくてね。無限パンチを今作で初めて繰り出す4話に、更なる名曲をぶつけてくるとは恐れいったよ。
私:もしかしたら菅野さんの繰り出す無限パンチにやられているのは私達のほうなのかもしれませんね。
妻:ドヤ顔でもっともらしくまとめてきたね。
前山田健一のまさにモーレツな作品「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」
私:そして今期のもう一つの神曲がアニメ「モーレツ宇宙海賊」の主題歌、ももいろクローバーZの「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」ですね。
妻:そもそも今期が始まる前には、このアニメ「モーレツ宇宙海賊」自体が全くのノーマークだったよね。
私:原作者の笹本祐一さんの名前を見たのが、小学生の時に読んでトラウマになった小説「妖精作戦」以来でしたからね。懐かしいとは思いながら原作のタイトル「ミニスカ宇宙海賊」を見て、「ミニスカ」を「モーレツ」にする感性は現代的にどうなんだろうかというのが第一印象だったんですよ。正直期待してなかったです。
妻:今にしてみると不遜な態度だったよね。
私:全くです。そんなノーマークなところに、第1話の冒頭からこの曲が流れてぶっ飛びましたよ。
妻:「なんだこのテンションの高い曲は」と思っていたら、ももクロと前山田さんだったからね。
私:思わず録画を巻戻して二度見しましたよね。アニメも予想に反した骨太なSFがテンポよく展開されて、面白いんですよ。笹本祐一さんがこんな素敵な作品を生み出し続けているとは知りませんでした。ついにトラウマに向きあう決心を固めて、創元文庫から再販されている妖精作戦シリーズを買いに走りましたからね。
妻:監督の佐藤竜雄さんはあの名作「機動戦艦ナデシコ」の人だしね。このSF群像劇をアニメ化するためにはこれ以上ない逸材だというべきなんだろうね。
私:私は「ナデシコ」も見たことがなかったんですよね…。
妻:ナデシコとその主題歌の「YOU GET TO BURNING」を知らずにアニメやアニソンを語ろうとは、オタクの風上にもおけないね。
私:全くそうだと思いましたよ…。精進が足りませんでした。
歌に話を戻すと、この「猛烈宇宙交響曲第七楽章~」は女子高生宇宙海賊モノのアニメにとして、これ以上の主題歌はないというぐらいにハマってましたよね。
妻:昨年の「Z伝説~終わりなき革命~」と並ぶももクロ&前山田健一さんの衝撃作だったね。
私:変身ヒーロー物へたうまアイドルソングに続いて、今度はスペースオペラ風へたうまアイドルソングですかってね。
妻:つうか、そんなジャンルをアイドルソングとして成り立たせているのがすごいよね。
私:この傑作アニメと融合して、本当に「モーレツ」以外の何物でもないと思いました。私の中では今期最高のアニメです。全面的に私が間違っていたことを認めざるをえなかったですね。一話ずつ、毎週繰り返し見ていますよ。
余談ですが、大森望さんが今期の芥川賞についてラジオの文学賞メッタ斬り!を放送しているときに、番組の中でこの「猛烈宇宙交響曲~」を流していたんですよね。
妻:そこにこの曲を持ってくるのはすごいね。
私:流石ですよね。ここ数年の私の読書傾向は完全に大森望さんの人の手のひらの上で転がされている感じですからね。
妻:この曲をきっかけに、遂に我が家のiTunesで前山田健一さんプレイリストが作られることになったんだよね。
私:改めてまとめて聞いてみると、前山田さんの曲って、ものすごくベタだけど多彩すぎる元ネタを電波な感覚で融合し、ものすごくポップにまとめてくるという、そういう技なんだと思いました。
妻:言っていることはわからんではないなあ。
私:また「我が名はチェリーボーイ」とか「ももクロのニッポン万歳!」とか、その歌詞を含めた発想がすばらしいです。
妻:「我が名はチェリーボーイ」はあの気持ち悪さがすごいよね。これからもあのプレイリストは充実させて行きたいところだね。
私:私は水樹奈々&上松範康さんに続いて、ももクロ&前山田さんがアニソン枠で年末の紅白に出場するのを期待してしまいますよ。
妻:ももクロもかなりメディアに露出しているし、もしかしたら期待できるかもしれないね。
神前暁さんの復帰作「白金ディスコ」がプラチナ素晴らしかった
私:我々の大好きな作曲家、神前暁さんが「偽物語」で復帰しましたね。「白金ディスコ」は素晴らしかったですね。
妻:めっさハマっていたよね。
私:「偽物語」の他の二作品「二言目」と「marshmallow justice」は前作のキャラソンを踏襲する趣向のものだったので、ファンとしては楽しめたんですが、ちょっと新鮮味がなくて物足りないものがあったんですよね。それがこの「白金ディスコ」で神前さんの凄さを改めて思い知らされましたよ。
妻:あのキャラを浴衣で踊らせ、なんだか懐かしい響きの和風ポップスを歌わせてくるとはね。
私:神前さんの真骨頂は、完璧なキャラ理解の上に、膝を打ちたくなるような発想をのせて、めっさポップにまとめてくるところですね。やはり現代日本のキャラソン作りで神前暁に勝てる人はいないと思いました。
妻:この曲がCD発売されなかったのは残念だね。7月発売予定のブルーレイの特典ということなので、フルバージョンが聞けるのは夏になってからだよ。
私:待ち遠しすぎますね…。まあ、今年の夏のお供として楽しみをとっておくと思うことにしますよ。
そして今期の神前さん作曲のアニソンとしてはもう一曲、「夏目友人帳」のエンディングテーマ、河野マリナ「たからもの」がありました。
妻:あの曲は夏目友人帳という作品の空気を読みきっていたよね。
私:そうですね。泣かせるための夏目友人帳のエンディングの役割に対して完璧な仕事を果たしていましたね。あれも見事な職人技でした。
さて、神前さんのこれからの展開で気になるのは、劇場版の「傷物語」の忍ちゃんソングがどうなるかというところですね。
妻:忍ちゃんはあの坂本真綾だからね。坂本真綾と神前暁さんの組み合わせがどんな曲が生むのかはすごく気になるね。
私 :やっぱり坂本真綾さんといえば菅野よう子サウンドのイメージじゃないですか。神前さんが菅野さんを意識した曲作りをしてくるのではないかと期待してしまいます。
妻:菅野よう子の「プラチナ」を意識した神前さん曲とか聴いてみたいね。
私:それって「カードキャプターさくら」のほうの「プラチナ」ですね。まさか「白金ディスコ」はその前フリだったというわけですね。
妻:キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードというキャラ的には、ロックな感じが合うんだろうけどね。
私:そのイメージだとマクロスFの「ノーザンクロス」とかぴったりですかね。
妻:なるほど。まあ、いろいろと期待と妄想が膨らむ組み合わせよね。しかし、そもそも坂本真綾ってキャラソンは歌わないから、どうなるのか気になるね。
私:ここはなんとしても歌ってほしいですね。坂本真綾ファンとしては、このキャラソン全盛期、キャラソンの楽曲としてのレベルがあがってきている時代にこそ、歌える声優さんとして活躍してほしいと期待しているんですけどね。まあ、もしダメだったら、その時には神谷浩史に阿良々木暦としてキャラソンを歌ってもらうしかないんじゃないですか。
妻:まさかのヒロC主題歌。そのファンの期待の斜め上をいく展開も素敵かもね。
<2012年冬のアニソン②>に続く